内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
業績紹介のページ


Copyright c 2002 ふきあげ内科胃腸科クリニック Allright reserved
半固形化の知識,寒天を用いた半固形化/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう
HOME

 
半固形化の知識   寒天を用いた半固形化
ふきあげ内科胃腸科クリニック   蟹江治郎
胃瘻ケアと栄養剤投与法 第一版,照林社,2009; 255-259.

Points
栄養剤を寒天等で半固形化し,重力に抗して形態が保たれプリン状となった形状のものが,いわゆる固形化栄養である.
固形化栄養は粘性のみならず弾性の物性により,半固形化栄養の利点を得るものである.
固形化栄養は自分で調理を行う方法と,市販化された製品を利用する方法がある.

半固形化における“固形化栄養”の位置づけ
固形化栄養とは,栄養剤を寒天等でゲル化し,重力に抗してその形態が保たれる形状としたものである(1).
固形化栄養は粘度と弾性をもって,半固形化栄養の利点を得ようとするものである(2).
固形化栄養は胃瘻を介して胃内に注入後,付着性の少ない粒状の形状となり,経口摂取により食事摂取を行った際の胃内容物に近似した形状となる.(図1)
栄養剤を固形化することで,栄養剤が胃内において生理的な形状となり,様々な効果が期待されている(3).(図2)

図1 固形化栄養の外観
固形化栄養の外観/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう       固形化栄養の外観/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう
調理後はプリン状の形態となり,注入後は胃内容物に近似した物性となる

図2 固形化栄養の特徴
固形化栄養の特徴/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう

蟹江治郎:胃瘻(PEG)ハンドブック,第1版,医学書院,東京,2002,P117より改変し転載

固形化栄養で寒天と用いる理由
寒天とは海藻類に含まれる粘性物質を抽出し水分を除いた乾物で,そのほとんどが水溶性の食物繊維である.
寒天は安全,安価,調理が容易で,ゼラチンと異なり体温で溶解することなく,胃内においてゲル状態を保つ.
寒天により調理した固形化栄養剤は,適度な粘度と弾性を持ち,付着性が少ないことから胃瘻カテーテルからの注入も容易である.
海藻由来の寒天であるが,ヨードについてはほとんど含有せず,毎日使用してもヨード過剰は来さない.
水溶性繊維である寒天は,便通異常に対しての効能をもつ(4).

固形化栄養の調理
寒天を用いた固形化栄養の調理は,10分足らずで実施が可能で手技も容易である.
固形化栄養の調理は,まず水の中に寒天を入れた後に2分間煮沸し溶解し,その寒天溶解液と栄養剤を混合し静置保存するのみで完成する.(図3)
調理のポイントは,寒天を加熱する前の冷水の状態で混合することである.熱湯に直接寒天を入れるとダマ状になるため,溶解が不充分になることがあり注意を要する.また煮沸も2分間しっかりと行い,充分な溶解を得ることも重要である.
寒天は室温で静置するのみで凝固が得られるが,作り置きする際は冷蔵保存が必要である.
寒天溶解液の量は,“投与症例の必要水分量”から“投与症例が栄養剤で得られる水分量”を除いた量として計算する.
寒天の濃度は栄養剤と寒天溶液を合わせた全水分量の0.5%が目安だが,栄養剤の内容で硬さは変わるため,若干の調節が必要になる場合がある.

図3 固形化経腸栄養剤調理の実際
固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう 固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう 固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう 固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう
1.栄養剤を加温 2.ボールなどに
栄養剤を注ぐ
3.水に寒天を入れ撹拌 4.加熱して寒天を溶解
固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう 固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう 固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう 固形化経腸栄養剤調理の実際/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう
5.寒天溶液と栄養剤を混合 6.シリンジに    
経腸栄養剤を吸引
7.口の部分をラップで封印 8.静置して凝固

蟹江治郎:胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践,第1版,日総研出版,名古屋,2004,P122より改変し転載

固形化栄養の投与
固形化栄養の注入容器はプラスチックシリンジを使用するが,ドレッシングポットやシャンプーボトルによる注入も報告されている.
栄養剤が冷蔵保存されている場合は,あらかじめ人肌程度に加温し注入を行う.
注入は数分前後で行い,一回の注入量は500ml程度を目安にする.
注入時は症例の状態を慎重に観察し,嘔気がある場合は注入速度を緩徐にするか,一旦中断して時間をおいて注入するようにする.
嘔気により必要量が注入できない場合は,1日の注入回数を増やす事により1回の注入量を減らして対処を行う

図4
 固形化栄養剤投与の実際
固形化経腸栄養剤投与の方法/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう

市販化されている固形化栄養
大塚製薬工場から市販されているハイネゼリーRは,寒天によりゲル化をした栄養剤で,重力に抗して形態が保たれる固形化栄養剤の定義を満たした製品である.
ハイネゼリーは寒天調理による固形化栄養に比較して調理の必要もなく,プラスチックシリンジなどの注入容器も不要である.
製品に付属されている経口摂取用キャップを用い,直接胃瘻カテーテルに接続し注入が可能である.
寒天によりゲル化しているため付着性が低く,注入に際しての抵抗が減るため,用手的に注入が可能である.
ハイネゼリーは1パック300Kcalで,その中に含まれる水分量は228mlとなる.そのため本製品を使用の際は,別途水分補給が必要である.
図5 市販固形化栄養のハイネゼリー
固形化経腸栄養剤投与の方法/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう    固形化経腸栄養剤投与の方法/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう

文 献
(1) 蟹江治郎・他:固形化経腸栄養剤の投与により胃瘻栄養の慢性期合併症を改善し得た1例.日本老年医学会雑誌;39(4): 448-451,2002.
(2) Jiro Kanie et al: Prevention of gastro-esophageal reflux by an application of half-solid nutrients in patients with percutaneous endoscopic gastrostomy feeding. Journal of the American Geriatrics Society, 52(3): 466-467. 2004.
(3) 蟹江治郎:胃瘻PEGハンドブック,医学書院,2002,117-122.
(4) 蟹江治郎:胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践 - 胃瘻のイロハからよくわかる -.日総研出版,名古屋.2003,p120-140.

このページのトップへ半固形化の知識,寒天を用いた半固形化/胃瘻・腸瘻,PEGの管理/栄養剤の選択/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう

寒天固形化栄養/半固形化栄養/半固形状流動食/PEG/経腸栄養/胃ろう/蟹江治郎/胃瘻