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W 在宅生活を送る高齢者にとって重要な医療およびケア 3.胃ろう |
ふきあげ内科胃腸科クリニック 蟹江治郎 |
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症状から学ぶ医療知識 第一版 中央法規;2012,224-231. |
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胃ろうは開腹手術により設置するものと,内視鏡により設置するものがあります |
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内視鏡で作る胃ろうをPEGといいます |
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PEGでは瘻孔の出来る準備をするだけで,瘻孔は術後1週間ほどで出来るといわれています |
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PEGカテーテルは,その位置を保持するために,2つのストッパーにより固定されています |
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PEGカテーテルは,その長さにより「チューブ型」と「ボタン型」に分類されています |
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PEGカテーテルの胃内ストッパーの形状により,「バルーン型」と「バンパー型」に分類されています |
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PEGの合併症は,瘻孔の完成する前後により「前期合併症」と「後期合併症」に分類されています |
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前期合併症は,PEG造設医療機関で起こる合併症で,嚥下性肺炎が重篤なものです |
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後期合併症は,療養施設や在宅で起こる合併症で,栄養剤リークが高頻度です |
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1.胃ろう栄養の基礎知識 |
(1)胃ろうとは何か
胃ろうとは胃に通じる瘻孔(ろうこう)の事です.瘻孔とは体内と体外,または体内の臓器と臓器の間に生じる管腔上の欠損,つまりトンネルのことをいいます.よって胃ろうとは,体表面より胃に通じるトンネルのことで,このトンネルを通じて胃に栄養管を挿入し,栄養補給をする方法を胃ろう栄養といいます.
(2)栄養補給法における胃ろうの位置づけ
1)経管栄養と経静脈栄養
口からの栄養摂取が困難または不可能な時の栄養補給法としては,チューブを使って栄養剤を注入する経管栄養と,点滴を利用して血管内に直接栄養を注入する静脈栄養があります.経管栄養は消化管機能の低下がない症例が適応とされ,消化管機能に問題がある場合や,一時的な水分補給の場合は静脈栄養が適応になります
2)胃ろう栄養と経鼻胃管栄養
経管栄養には胃への瘻孔を利用して栄養管を胃に挿管する胃ろう栄養と,鼻より咽頭を経由して胃に栄養管を挿管する経鼻胃管があります.胃ろうの場合,外科的処置により瘻孔を造設する必要はありますが,栄養管が抜けにくく,半固形栄養の注入も可能なため,長期の経管栄養管理を行う症例に適した方法とされます.経鼻胃管は手術を行うことなくチューブの設置は行えますが,鼻や咽頭の違和感があり,自己抜去も頻繁のため,長期の栄養管理には不向きな方法といえます.
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図1 栄養補給法の選択
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2.胃ろうの造設法 |
(1)胃ろう造設法の動向
胃瘻の造設法には,19世紀より行われている開腹手術により瘻孔を造設する開腹胃ろう造設と,近年行われるようになった内視鏡を利用して瘻孔を造設する内視鏡的胃ろう造設(Perctaneous Endoscopic Gastrostomy,以下PEG)があります.開腹胃ろうは確実な瘻孔造設が可能ですが,全身麻酔による開腹手術となるため身体に対する負担も多く,胃ろうの適応となる高齢者に対しては適応となることはほとんどありません.一方,内視鏡を利用して胃ろうを造設するPEGは,局所麻酔で実施が可能であり,短時間で簡便に手技が行えることから,高齢で栄養状態の悪い症例においても実施が可能になります.
(2)PEGの方法と種類
1)PEGにおける造設法の基本
PEGの造設法を図2に示します.PEGの場合,まず内視鏡挿入して送気を行うことによって,胃壁と腹壁を密着します.その密着した部分を確認した後に,同部に局所麻酔を行い注射針を刺し,その注射針をつたってガイドワイヤーという金属製のワイヤーを入れます.最後にそのガイドワイヤーをつたって口から胃ろうカテーテルを挿入する方法をプッシュ/プル法といい(1),腹壁からカテーテルを挿入する方法をイントロデューサー法といいます(2).
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図2 PEGの造設法
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蟹江治郎:胃瘻PEGハンドブック(医学書院)より一部改変し引用転載
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2)PEGにおける瘻孔の完成
PEGの場合,開腹胃瘻と異なり外科的手技により瘻孔を形成するわけではありません.PEGにおけるカテーテルの貫通部分は,造設直後は胃の外部のストッパーと内部のストッパーにより,胃壁と腹壁が密着していますが,まだ瘻孔は出来ていません.PEGは手術によって瘻孔を作るのではなく,手術によってPEGカテーテルを挿入し,胃壁と腹壁を密着させることにより,瘻孔が出来る準備をするだけなのです.瘻孔の形成は1週間ほどで出来るとされていますが,カテーテル交換が可能なほどの強度を持つためには,3−6ヶ月は要するものとされています.
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図3 PEGにおける瘻孔の形成
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蟹江治郎:胃瘻PEGハンドブック(医学書院)より一部改変し引用転載
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3.PEGカテーテルの構造と種類 |
(1)PEGカテーテルの構造
PEGカテーテルは,その位置を正しく保持するために,位置固定のためのストッパーがあります.このストッパーには胃内に存在する「胃内ストッパー」と,体外に位置する「体外ストッパー」があります.胃内ストッパーはカテーテルの先端である胃内腔に位置し,カテーテルの抜去を防止する役割があります.体外ストッパーは体表面に位置し,カテーテルが胃の蠕動運動に伴って腸へ先進する事を防ぐ役割があります(図4).
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図4 PEGカテーテルの構造
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(2)PEGカテーテルの種類
PEGカテーテルの分類は,体表面からのカテーテル突出の有無と胃内固定板の形状により分けられます.まず,体表面からのチューブ突出の有無では,体表面からカテーテルが出ているものを「チューブ型」とし,突出のないものを「ボタン型」としています.また胃内ストッパーがバルーン式のものを「バルーン型」とし,バルーン出ない形状のものを「バンパー型」としていいます.これら2種類の二分類により,PEGカテーテルは計4種類に分類されています.(図5,6) |
図5 PEGチューブの種類
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図6 各チューブの形状
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4.PEGの合併症 |
(1)PEGにおける合併症の考え方
前述のごとく,PEGの場合は手術によって瘻孔を形成するのではなく,手術によって胃ろうカテーテルを設置し,その後,次第に瘻孔が形成していきます.そのため瘻孔部の環境は瘻孔が完成する前と,完成した後では瘻孔周囲の状況にかなりの差が生じます.そのためPEGの合併症は,瘻孔が完成する前に発生する「前期合併症」と,瘻孔が完成した後に発生する「後期合併症」に分けて理解するとよいでしょう(3).
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表1 PEG合併症の種類
前期合併症 (瘻孔完成前合併症) |
後期合併症
(瘻孔完成後合併症) |
感染に関連 |
感染に関連しない |
1)創部感染症 2)嚥下性呼吸器感染症(肺炎等) 3)汎発性腹膜炎 4)限局性腹膜炎 5)壊死性筋膜炎 6)敗血症 |
1)創部出血 2)再挿入不能 3)事故抜去 4)バルーン破裂 5)皮下気腫 6)チューブ閉塞 7)胃潰瘍 |
1)嘔吐回数増加 2)再挿入不能 3)チューブ誤挿入 4)事故抜去 5)胃潰瘍 6)栄養剤リーク(栄養剤漏れ) 7)バンパー埋没症候群 8)チューブ閉塞 9)挿入部不良肉芽形成 10)カンジダ性皮膚炎 11)体外固定板接触による皮膚障害 12)胃内固定板による胃腸通過障害 13)胃-結腸瘻 |
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(2)合併症の種類と内容
前期合併症は瘻孔が完成する前の合併症のため,PEGの造設を行う医療機関で起こりえる合併症といえます.合併症の頻度としては,創部感染症が高頻度ですが,重篤となり生命予後に影響を及ぼしやすいものとしては嚥下性呼吸器感染症があります.この合併症は仰向けの体位で内視鏡挿入を行うPEGの造設では,一定の確率ではあれ,避けることの出来ないものといえます.
後期合併症は瘻孔が完成した後の合併症のため,PEGの慢性期管理を行う療養施設や在宅で起こりえる合併症といえます.頻度の高いものとして栄養剤リークや嘔吐があげられます.しかし,これらの合併症に関しては,栄養剤を半固形化する事による対応が普及しつつあります(4).またPEGカテーテルの交換時に発生する,腹腔へのカテーテル誤挿入も知っておかなければなりません.PEGの瘻孔は薄い膜で出来ており,カテーテル交換による圧力により破れ,腹腔内に誤挿入されることがあるのです.そのため経鼻胃管挿入時と同様に,PEGにおいても挿入後は必ず胃内に入っているかどうかの確認が必要です(5). |
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◆ 用語解説
瘻孔:体内と体外,または体内の臓器と臓器の間に生じる管腔上の欠損,つまりトンネル
胃ろう:体表面より胃に通じる瘻孔
PEG:胃カメラを利用して作る胃ろう造設法のこと
経鼻胃管:鼻から胃へ栄養管を送り栄養剤を注入する栄養投与法
静脈栄養:点滴を利用して血管内に栄養剤を注入する方法
半固形栄養:胃ろうから注入する栄養材で,ある程度の固さにすることにより半固形状にしたもの
全身麻酔:意識をなくした状態で人工呼吸器をつけ手術をするときの麻酔法
局所麻酔:手術を行う部分だけの痛み止め注射を行い,意識は変化しない麻酔法
カテーテル:医療用に使用されるチューブのこと
胃ろうカテーテル,胃内ストッパー:カテーテルの先端である胃内腔に位置し,カテーテルの抜去を防止するもの
胃ろうカテーテル,体外ストッパー:体表面に位置し,カテーテルが胃の蠕動運動に伴って
腸へ先進する事を防ぐもの
胃ろうカテーテル,チューブ型:体表面からカテーテルが出ているもの
胃ろうカテーテル,ボタン型:体表面からカテーテルが出ていないもの
胃ろうカテーテル,バルーン型:胃内ストッパーがバルーン式のもの
胃ろうカテーテル,バンパー型:胃内ストッパーがバルーン式でないもの
バンパー埋没症候群:胃内ストッパーと体外ストッパーの間隔が狭すぎ,瘻孔部分に壊死が生じ,ストッパーが腹壁に埋没した状態 |
◆ 引用文献
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