内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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胃瘻PEG,その適応,手技,合併症管理と寒天固形化栄養の実践  
ふきあげ内科胃腸科クリニック   蟹江治郎
岐阜県保険医協会新聞.2018年5月10日 第483号,4.
 

@ PEGの適応と栄養投与法の選択
1)PEGの適応,栄養瘻と減圧瘻
 PEGの適応には栄養剤の投与を目的とした栄養瘻と,消化管の減圧を目的とした減圧瘻がある.栄養瘻としての適応は,各種神経疾患などによる摂食嚥下障害が一般的な適応となり,減圧瘻としての適応は,癌性腹膜炎など不可逆的な消化管通過障害における減圧が目的となる.
2)栄養投与法におけるPEGの位置づけ(図1)
 経口摂取が困難な場合の栄養投与法には経腸栄養投与法と静脈栄養投与法がある.経腸栄養投与法は消化管機能が正常な症例が対象となり,消化管機能が低下した症例においては静脈栄養の対象となる.経腸栄養投与法においては,実施期間が4週間以内の場合は経鼻胃管が適応となり,それを超えて実施が見込まれる場合はPEGの適応となる.

図1 栄養投与のルートの選択
栄養管理のルートの選択

A PEGの造設法
1)PEG造設手技の基本
 PEGの造設法は,まず内視鏡からの送気により胃壁と腹壁の密着をし,用指圧迫や内視鏡の透過光確認により穿刺部位を決める.そして同部に局所麻酔を行った後,カテーテルを通過させる貫通孔を造り経口ないしは経腹壁的にカテーテルを挿入して留置を行う.
2)PEG造設手技の分類
 PEGの造設法はカテーテルの挿入経路により分類される.カテーテルが口腔咽頭を経由して挿入され,カテーテルを牽引することにより留置する方法が“Pull法”,カテーテルを押し入れる方法は“Push法”と呼ばれる.一方,カテーテルを腹壁より挿入する方法はIntroducer法とよぶ.
 

B PEGの合併症
1)胃瘻術後合併症の分類(表1)
 PEGの術後合併症は,術後3週間以内で瘻孔完成する前の合併症を“前期合併症”,術後4週間以後の瘻孔が完成した後に発生する合併症を“後期合併症”として分類する.前期合併症はPEGを造設する医療機関で発生する合併症,後期合併症は胃瘻を管理する医療機関や在宅で発生する合併症と考えてよい.
2)覚えておきたい合併症
創部感染症:創部感染症は術後創部に発生する細菌感染となり,口腔咽頭を経由してカテーテルを留置するPull/Push法が,Introducer法に比較して頻度が高くなる.
嚥下性呼吸器感染症:PEGにおける内視鏡操作は仰臥位にて施行されるため,誤嚥の発生しやすい状況となる.そのため術後は腹部合併症のみならず,呼吸器感染症に関しても充分な経過観察を要する.
栄養剤リーク:栄養剤リークとは瘻孔より栄養剤などの胃内容物が漏出する状態である.その発生原因としては瘻孔の自然拡張,体外ストッパーによる瘻孔への圧迫が強い場合,バンパー埋没症候群の一症状として発生する場合などがある.
カテーテル誤挿入:カテーテル交換時に,その先端が瘻孔壁を破壊穿破し腹腔内へ挿入されることがあり,この様な状態をカテーテル誤挿入という.そのため,カテーテルの交換を行ったあとは,先端が胃内に挿入されているかを確認することが重要である.
バンパー埋没症候群:バンパー埋没症候群とは内部ストッパーが胃腹壁内へ埋没する状態である.カテーテルは内部ストッパーと外部ストッパー同士の圧迫により血流障害が発生し,内部ストッパーが腹壁に埋没することにより発症する.
 

表1 胃瘻術後合併症の分類
 
前期合併症 (瘻孔完成前合併症) 後期合併症
(瘻孔完成後合併症)
感染に関連 感染に関連しない
 1) 創部感染症
 2) 嚥下性呼吸器感染症(肺炎等)
 3) 汎発性腹膜炎
 4) 限局性腹膜炎
 5) 壊死性筋膜炎
 6) 敗血症
 1) 気腹
 2) 創部出血
 3) 事故抜去
 4) バルーン破裂
 5) 皮下気腫
 6) カテーテル閉塞
 7) 胃潰瘍
 
 1) 嘔吐回数増加
 2) 再挿入不能
 3) チューブ誤挿入
 4) 事故抜去
 5) 胃潰瘍
 6) 栄養剤リーク(栄養剤漏れ)
 7) バンパー埋没症候群
 8) カテーテル閉塞
 9) 挿入部不良肉芽形成
 10) カンジダ性皮膚炎
 11) 体外固定板接触による皮膚障害
 12) 胃内固定板による胃腸通過障害
 13) 胃-結腸瘻
 

C 寒天固形化栄養の実践
 
1)栄養剤が液体であるがゆえの問題
 経腸栄養剤は,かつて主として行われていた経鼻胃管において,その投与を可能にするために液体の物性である必要があった.ただ,液体栄養は半固形状栄養に比較して流動性が高いため,噴門,幽門,瘻孔の通過が容易であり,胃瘻症例における嘔吐,下痢,栄養剤リークの原因となる.
2)寒天固形化栄養とは
 栄養剤を寒天により半固形化したものである.栄養剤の半固形化とは,その流動性を低下させることにより,胃内への注入後に胃内貯留を安定させ,液体栄養の様々な問題を克服するために発案された物性の変更方法である.
3)寒天固形化栄養の効果(図2)
 栄養剤を半固形化することにより噴門の通過性が低下すれば,胃食道逆流の頻度が減り,嘔吐や嚥下性肺炎の予防が可能になる.幽門の通過性が低下すれば,下痢や食後高血糖に対しての効果が得られ,瘻孔の通過性が低下すれば,栄養剤リークに対しても効果が得られる事になる.

図2 寒天固形化栄養の効果
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