内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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半固形剤・半固形流動食 この15年のあゆみ  
ふきあげ内科胃腸科クリニック   蟹江治郎
第15回 北海道胃瘻研究会 特別講演 資料,2017,7.
   
 「蟹江先生,経鼻胃管の交換,お願いしま〜す.」 平成二年,卒後1年目,神経内科ローテートで勉強をさせて頂いていた私の仕事は,もっぱら経鼻胃管の交換であった(要するに下働き).胃瘻やPTEGが選択できる現代とは異なり,当時の経管栄養投与法といえば経鼻胃管が唯一の選択肢であった.経鼻胃管で用いるカテーテルは,鼻腔を経由して胃に到達する必要があるため,胃瘻のカテーテルに比較して細径かつ全長が長くなる.その形状,つまり細径で長いカテーテルに栄養剤を通過させるためには,その形状が液体である必要があった.ヒトに限らず動物は一般的に栄養補給の手段として,半固形物や固形物を摂取している.にもかかわらず当時の経管栄養剤が液体のみであったのは,液体がその形状として生理的に優れているからではなく“経鼻胃管からの滴下注入を可能にする”という唯一の目的のために液体である必要があったのだ.ただ,医師1年目として駆け出しの私には,その様なことも理解が出来ず,「自分たちは固まった食物を食べているのに,経管栄養の症例は点滴のような液体の投与のみで大丈夫なのだろうか?」と漠然と感じ,その投与風景に強い違和感を覚えていたのであった.
 時代も経過し経管栄養法も進歩を遂げる.特筆すべきは内視鏡を用いた胃瘻造設術(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy,以下PEG)の選択が可能になったことである.PEGは経鼻胃管に比較してカテーテルのトラブルがや留置に伴う患者の苦痛が少なく,美容上 でも有利なため急速に普及を遂げた.それまで,液体栄養に違和感を覚えていた筆者は ,PEGで用いるカテーテルが経鼻胃管のものと比較して太く短い部分に着目した.当時の経腸栄養剤は,細く長い 経鼻胃管から注入することを前提としていたため,液体である必要があった.しかし,太く短いPEGのカテーテルならば,我々が通常摂取している固形物と,同様の形状の栄養剤を注入できるのではないかと考えたのが,寒天固形化栄養の出発点である.
 栄養剤を固めるといった概念がない時代に,固めるすべを考案することは容易なことではなかった.当初,半固形化の方法としてゼラチンを検討したが,固めたとしても胃内で体温により溶解してしまうので不適と考えた.全卵により半固形化も検討したが,コスト面と栄養面での影響から断念した.試行錯誤を重ねるうちに,入手と調理が容易であり,コスト面においても有利ということで寒天に着目し栄養剤のゲル化を開始した.初めてゲル化を実施した症例は,胃瘻を介しての栄養管理を行うも,栄養剤リーク,嘔吐,肺炎などを反復する症例であった.効果としては著効で全ての合併症を改善し,2002年に症例報告として日本老年医学会雑誌にて報告を行った.その報告を行った17年前から今に至るまで ,その考案に問題点を感じないため寒天を用いた半固形化栄養を行っている.当初,寒天固形化栄養は自身で調理するより選択肢は無かったが,2007年には食品の製品が上市し2014年からは薬剤の製品も発売がなされた.
 本講演にあたっては,液体栄養のみが選択肢であったかつての状況 ,半固形化栄養の普及の過程,現状における半固形化栄養の選択法と実施方法について解説をしたい.
 

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