内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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先入観で広がる「胃ろう拒否」  医療現場に混乱・困惑 
【取材】 蟹江治郎
中日新聞 朝刊 医療取材班 2013年8月27日 
    

◆ 代替方法で感染症や苦痛 「終末期以外なら利点も考慮して」


 のみ込む機能が低下した患者の効果的な栄養補給手段として、腹部に開けた穴から栄養剤を送る「胃ろう」。ここ数年、「過剰な延命治療」とのイメージから、拒否する患者が増えている。その一方で、感染症の危険性が高い静脈からの栄養補給法などを選び、苦しむケースもみられ、医療現場で困惑が広がっている。(山本真嗣)

  「胃に穴を開けてまで生きたくない。死んだ方がまし」。三重県内の病院で7月に亡くなった70代の女性は、胃ろうを拒み続けた。

1年前から、免疫の異常で体の組織に炎症が起きる膠原(こうげん)病の一種を患い、自力でのみ込むことができなくなった。2月に他の病院から転院してきたときは、本人の希望で鎖骨下の中心静脈にカテーテルを埋め込み、高カロリーの輸液を流し込む「中心静脈栄養法」を施されていた。

 しかし、この栄養法はカテーテルを長期間、血管に留置するため感染症が起きやすい。胃腸を使わないと免疫力も下がる。主治医は何度も胃ろうを勧めたが、意思は変わらなかった。心配した通り、女性は細菌感染症が全身に及ぶ敗血症に。最後は重い呼吸不全に陥った。本人の意向を尊重した結果で、家族は納得しているという。だが、主治医は「救えたかもしれない命と思うと、複雑」と話す。
先入観で広がる「胃ろう拒否」  医療現場に混乱・困惑/蟹江治郎/胃瘻/PEG/胃ろう/中日新聞 患者への医療の希望調査票。「胃ろうによる栄養補給」は希望せず、「鼻チューブによる栄養補給」を希望している=三重県内の病院で
 胃ろう問題に詳しい「ふきあげ内科胃腸科クリニック」(名古屋市千種区)の蟹江治郎院長(48)によると、消化管が機能し、栄養補給が短期の場合は鼻から管を入れる「経鼻経管栄養法」、消化管が機能しない場合は静脈からの栄養補給が望ましいという。これらは胃ろうの普及前、長期の栄養補給にも使われたが、感染症の危険性や管理が煩雑など欠点が多かった。
 一方、胃ろうは消化管が機能し、1〜3カ月以上の長期の栄養補給が必要な場合、自然な消化吸収が期待できる安全な最も優れた方法。体力が回復し、口から食べられるようになれば器具を取り外すことができる。ところが、「胃ろう=意味のない延命」との先入観が広がり、患者や家族が終末期の延命治療なのか、回復に必要な栄養管理なのか、十分に考慮しないまま「胃ろうは嫌だが、他の栄養補給はしてほしいという人が増えている」と、蟹江院長は指摘する。

 医療機器の市場調査会社アールアンドディ(名古屋市瑞穂区)によると、全国の胃ろうの造設キットの出荷数は昨年が11万3100セットで、前年より14%減少。今年はさらに10万セット近くまで落ち込む見通しだ。過剰拒否の弊害を訴えている榊原白鳳病院(津市)の笠間睦(あつし)医師によると、自身が担当する療養病床で、長期の経管栄養を受ける患者43人のうち、経鼻経管栄養は18人と1年前より6人増えた。 笠間医師は胃ろう拒否が増えた原因に、延命治療の是非に焦点を当てた報道や、日本老年医学会が昨年出した高齢者の終末期医療に対する考え方などを挙げる。
 同学会は「胃ろうを含む経管栄養などの適用は慎重に検討されるべきである」として、「治療が患者の尊厳を損なったり、苦痛を増大させたりする可能性があるときは、治療の差し控えや撤退もあり得る」と強調。同学会は終末期の栄養補給の是非の議論を提起したのに、その代表格として単純に「胃ろうバッシング」につながったと、笠間医師は指摘する。

 経鼻経管栄養の問題の1つは、患者の苦痛が大きいこと。三重県の主婦(61)は80代の母が3年前に脳梗塞で倒れた際、医師に胃ろうを勧められた。だが、テレビで見た延命治療が頭に浮かんで拒否。母は一命を取り留めた後、経鼻経管栄養を実施した。
 その後、転院先の病院で苦しそうにえずき、何度も管を抜いてしまうため、両手に防止用のミットがはめられ、ひも状の抑制帯で腕をベッドに拘束されることもあった。そんな姿を見かねて胃ろうに変更。力の抜けた顔つきも次第に良くなり、呼び掛けにも応じるようになった。今は介護老人保健施設で暮らす。
 笠間医師は「終末期と診断され、延命を望んでいない患者であれば栄養補給をせず、在宅で静かにみとられるのが一番幸せだと思う。だが、終末期ではないのなら、それぞれの利点や欠点をしっかり認識し、選んでほしい」と話す。

 胃ろう  内視鏡で腹部から胃に数センチの穴を開け、外部とつなぐキットを組み込み、管を通して直接、水分や流動食、薬剤を流し込む。血管内にカテーテルを留置する静脈栄養法は、細菌が全身に行き渡るリスクが高いが、胃ろうは感染症が起きても大半が傷口部分でとどまるため、より安全とされる。

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