内視鏡的胃瘻造設術(PEG)
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PEGのリスクマネジメントと最新の固形化経腸栄養投与法
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PEGのリスクマネジメントと最新の固形化経腸栄養投与法
ふきあげ内科胃腸科クリニック  蟹江治郎
第22回信州NST研究会 特別講演抄録,信州医学雑誌,2009;57(2),84.

 経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)は,嚥下障害により経口摂取が充分行えない高齢者に対する有効な栄養投与法である.本法は簡便に実施が可能であるが,その手技や管理に伴う合併症は希ではない.またPEGにおける合併症は,単なる偶発症の場合のみならず不適切な管理によっても発生する場合もあり,PEGに携わる医療従事者は本法に対して充分な知識を持って管理すべきである.
 PEGのおける瘻孔は外科的造設と異なり,造設直後に完成するものではない.PEGの造設手技では,PEGカテーテルにより胃への貫通孔を確保するとともに,カテーテルの胃内ストッパーと体外ストッパーにより胃壁と腹壁を密着させることにより瘻孔が完成する.その瘻孔が完成する前の合併症は前期合併症,瘻孔が完成した後の合併症は後期合併症とされ,胃瘻管理を行う医療従事者は,PEGにおける瘻孔を理解し造設時期からの期間を考慮に入れた対応が必要となる.
PEGの前期合併症として頻度が高いものとしては瘻孔部感染と呼吸器感染があげられる.瘻孔部感染はカテーテルが口腔を経由して設置されるPull/Push法において高頻度である.この方法で胃瘻を造設する場合は,術前に口腔咽頭培養を行い適正な抗生剤を選択するとともに,術直前の口腔咽頭清拭が重要な予防処置となる.呼吸器感染症に関しては,胃瘻造設中の臥位による内視鏡操作が発生誘因となるので,術中は誤嚥を予防するために頻回の吸痰処置を行うとともに,術後の発熱には呼吸器感染の発生を含めた充分な鑑別診断が必要である.
瘻孔が完成した後に発生する後期合併症としては,瘻孔からの栄養剤漏れである栄養剤リークや嘔吐が高頻度である.栄養剤リークの原因としては,経年的変化による瘻孔拡張,外部ストッパーによる過度の圧迫,そしてバンパー埋没症候群があげられる.そのため栄養剤リークが発生した場合は,その発生原因を確かめ,原因に応じた対処が必要になる.胃瘻の長期管理において発生し,他の経管栄養投与法にない合併症として,カテーテル接触による胃潰瘍とバンパー埋没症候群があげられる.カテーテル接触により発生する胃潰瘍は,カテーテルの胃後壁への接触により発生し,尿道用カテーテルなど胃内ストッパーからカテーテルが突出している型に多い.そのため胃瘻カテーテルの選択にあたっては,胃内ストッパーよりカテーテルの突出が少ない型を選択して使用する必要がある.バンパー埋没症候群とは体外ストッパーの固定が強く,瘻孔部の血流障害が生じ,瘻孔部壊死により胃内ストッパーが腹壁に埋没する状態である.この合併症を予防するためには,瘻孔完成後は体外ストッパーを皮膚より1〜2cm浮かした状態に設置し,瘻孔部の圧迫を回避することが重要である.
演者はPEGの後期合併症として高頻度の栄養剤リークや嘔吐回数増加,そして経管栄養に伴う合併症である下痢に対して “固形化経腸栄養”を利用した対処法を行っている.この固形化経腸栄養剤とは,従来使用されている液体経腸栄養剤を粘度増強剤などで単に半固形化するに留まらず,寒天等によりゲル化を行い“重力に抗してその形状を保つ程度の固さ”としたものである.これにより固形化栄養は胃瘻を介して胃内へ注入した後に,食物を咀嚼嚥下した胃内容物と同様の性状となる.その結果,液体経腸栄養剤に比較して流動性が低下することにより,胃瘻症例でみられる胃食道逆流,栄養剤リーク,そして下痢など合併症の軽減を図った栄養投与法である.固形化栄養投与法においては,既存の液体栄養を寒天を用い半固形化して注入する方法と,市販の固形化栄養(ハイネゼリーR:大塚製薬工場)を用いる方法がある.本会においては,これらの固形化経腸栄養投与法についても細説する予定である.

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